バドミントン飯野佳孝イズム

選手を強くしたい指導者と強くなりたい選手のためのブログです。

ランニング神話から目覚めよ!

未だにバドミントンのスタミナを向上するには、ランニング(長距離走)が必要不可欠だ!

と思い込んでいる選手、指導者がたくさんいます。

私達は練習時間が限られているので、出来る限りバドミントンが強くなる、うまくなるため
の練習・トレーニングを効率よく実施したいものです。従ってバドミントン競技のトレーニン
グにおけるランニング(長距離走)の位置づけをしっかり理解しておく必要があります。

ランニング(長距離走)はバドミントン競技のスタミナ向上に有効なのかどうかを考えてみ
るためブログで取り上げてみました。

 

■トレーニングの定義
環境運動刺激に対する人体の適応性を利用し,身体運動を行うことによって意志力を
含めた
人間体力を高めること,もしくはその過程をいう。生体は運動という刺激(トレーニ
ング
負荷)によって変化を生じ,それを繰り返すことによって機能を高めることができる。」と
されています。

わかりやすく表現すると、目的とする動作、運動強度、時間、動くスピード、動くテンポなど
を長い期間トレーニングにより繰り返すことで、体を徐々に適応(順化)させていくことをいい
ます。

 

このように考えるとランニングの動作、運動強度、時間、動くスピード、動くテンポに体が
適応することで、バドミントンのスタミナ向上になるのかどうかが判断の基準になります。

そこでランニングとバドミントンの試合時の運動特性を比較してみました。

 

■ランニングの運動特性

・運動の種類:連続運動

・エネルギー供給経路:有酸素性エネルギー供給経路

・運動強度:中負荷で最大心拍数の60~70%(個人により異なる)

・動員される筋線維:遅筋線維(SO線維)

・動作:ランニング動作の繰り返し

 

■バドミントンの試合時の運動特性

・運動の種類:間欠運動

・エネルギー供給経路:無酸素性エネルギー供給経路(ATP-PCr系・解糖系(乳酸系))

・運動強度:高負荷で最大心拍数の70~90%(シングルスの場合で個人により異なる)

・動員される筋線維:遅筋線維<速筋線維を多く動員(FG線維・FOG線維)

・動作:ツーステップ、サイドステップ、クロスステップ、継ぎ足、空中で足の入れ替え、動き始
    めに床を強く蹴る、ジャンプ動作などでランニング動作とは全く異なる

 

ランニングの運動特性とバドミントンの試合時の運動特性は、全く異なることが理解でき
たと思います、

 

1.ランニングがバドミントンのスタミナ向上にならない理由―1

ランニングはバドミントンのシングルスの試合時に比べ運動強度が低く、その運動強度に
慣れてもバドミントンのスタミナ向上にはならない。

試合のラリーで対戦相手が速く動くと自身も速く動く必要があり、運動強度が高くなります。
又、ラリー時間が長くなると同じく運動強度が高くなります。それらを何回か繰り返すと乳酸
が多く生成され、個人毎のレベルを超えると動きを抑制せざるを得なくなります。この時に
スタミナ切れが発生するわけです。

ゲーム練習もランニングと同じことがいえます。本番の試合で普段行っているゲーム練習
より速く動いたり、長いラリーが続いたときに乳酸が大量に生成され、スタミナ切れが起こ
ります。

従って、バドミントンの動作で速く長く動き、短い休息を挟み、繰り返し実施することで乳酸
を大量に生成し、それに体を適応させるようにすることがスタミナ向上のための練習・トレ
ーニングです。

 

2.ランニングがバドミントンのスタミナ向上にならない理由―2

ランニングの動作とバドミントンの動作とは全く異なるため、ランニングを日々繰り返し実施
しランニング動作の熟練度を増しても、バドミントンのフットワーク動作の熟練度向上にはな
らない。

 

ランニングの位置づけをどのように考えればよいのであろうか?

  本格的な練習に入る前のトレーニング時期にランニングを実施する(しばらく練習を休ん
でいる時期から本格的な練習に入る前の時期)

  体脂肪を燃焼させたい時期にランニングを実施する

  ハードな練習や高強度の試合があった翌日などに回復を図る場合にランニングを実施
する(走るスピードを遅くする)

  忍耐力を養成する場合にランニングを実施する

 

<結論>

ランニング(長距離走)は、バドミントンのスタミナ向上の土台作りとして必要である。しかし、
バドミントン競技のスタミナ向上の直接的な刺激にはなりづらい。

 

数年前、カナダトロント近郊でコーチングセミナーを開催しました。セミナーで廣田彰宮崎大
学名誉教授が講義を行い、選手と指導者に対して以下の質問を行いました。

「ランニング(長距離走)はバドミントンのスタミナ養成に有効かどうか?」

参加していた約30名の選手&指導者全員共「有効ではない」と回答しました。

日本だったらもちろん「有効である」と全員が回答しているでしょう。

私たち講師、スタッフは有効ではない、という答えを分かっていたが、同じ答えがカナダ選
手&指導者全員から聞くことに驚きを隠せませんでした。

理由を聞くとランニングは有酸素性トレーニングであり、バドミントンは、コート内を速く動
くので無酸素性トレーニングを実施しなければならない、というものでした。

運動生理学の基本を理解しているから即答できたのでしょう。

日本はスタミナ向上=ランニング(長距離走)のイメージが固定されています。

早く目覚めたいものですね。

 

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テーマ:バドミントン - ジャンル:スポーツ

  1. 2013/04/27(土) 09:00:00|
  2. トレーニング
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

初めまして。

初めまして。いつも興味深く読ませていただいています。

一つご質問です。
③ ハードな練習や高強度の試合があった翌日などに回復を図る場合にランニングを実施する(走るスピードを遅くする)

についてです。

以前ある方のブログで乳酸についての記事がありました。
乳酸はジョギングやランニングなどの同じ動作の繰り返しにより消化(消費?)されるとの事。
(乳酸学会発表だったはずです。)

上記③はこのことと同じ事だと理解していますが、③の「翌日などに」が気になります。
ハードな練習をした後『ある程度時間が経たなければ』ジョギングやランニングなどによる回復は見込まれないのでしょうか?(効率的ではない?)

例えば試合の合間などの短い間隔でジョギング等の運動をしても乳酸の消化(消費?)は行われない、もしくはあまり効果のないことなのでしょうか?

私自身が実践してみたところ効果があったような感覚あります。
気のせいかもしれませんが。。。

試合数多くなればなるほどその日の体の保たせ方というか管理方法が大切と考えていますが、何か良い方法あるのでしょうか?

的外れな質問だったのであればこのコメント削除してください。
  1. 2013/04/27(土) 10:05:19 |
  2. URL |
  3. INDY #-
  4. [ 編集 ]

INDY様 飯野です。ご質問ありがとうございます。以下のとおり回答させて頂きます。

1.乳酸の基礎知識
運動強度の高い試合などで生成された乳酸は、グリコースに再合成されエネルギーとして利用されます。また、有酸素的なエネルギー源としても利用されます。従って高強度な試合の後(1日の最終試合の後)、ジョギングなどの有酸素運動で乳酸をエネルギーとして利用することで乳酸を減少することができます。但し、実施有無は疲労具合にもよると思います。

2.翌日で回復を図るためにランニング(ジョギング)を実施
高強度な運動で生成された乳酸は翌日まで残っているかというと殆どなくなっています。ゆっくりしたランニングの目的は、ランニングにより血液循環を促進し疲労回復を早めようとするものです。他に栄養補給、ストレッチ、入浴、質の高い睡眠などを心掛けてください。

3、試合の合間の短い間隔でのジョギング
上記1の後半部分が該当します。しかし、試合の間隔が短いのにジョギングなどを行うと逆に疲労するのではないでしょうか? バドミントンのような高強度の間欠運動を断続的に実施すると約90分でエネルギー源である糖(グリコーゲン・グリコース)が枯渇します。試合の合間は、前の試合で失われたエネルギー源や水分などを補給することを最優先にされては如何でしょうか? もちろんストレッチも忘れずに実施してください。
以上です。
  1. 2013/04/27(土) 15:20:17 |
  2. URL |
  3. 飯野佳孝 #-
  4. [ 編集 ]

長距離走と(試合での)スタミナ

>>日本はスタミナ向上=ランニング(長距離走)のイメージが固定されています。

はじめまして。僕は高校生の頃にバドミントンを始めた者です。ランニング(走り込み)はバドミントンに限らず、足腰を鍛えるため、とか、持久力を鍛えるため、などと称してよく体力作りに利用されているようです。僕もよく走らされました。

僕自身はたいした選手ではありませんでしたし、既にもうスポーツとは関わりがありませんが、最近のスポーツのためのトレーニング理論を垣間見ると、いかに不合理な練習を一生懸命行っていたか、ということを知って少し残念な思いがします。

若かりし時の思い出としてのバドミントン部での練習は、自分にしてはよくがんばった思い出として、それ自体は大切なものですが、下手糞は下手糞なりにもう少し上達できたのかもしれない、と思うと残念です。

非合理的な練習は不必要な怪我を誘発する場合がありますので、トップレベルの選手たちだけでなく、末端の選手や愛好者たちにもその知識が広まるといいなと思います。
  1. 2013/05/08(水) 19:35:05 |
  2. URL |
  3. 幽寂閑雅 #-
  4. [ 編集 ]

飯野です。ご意見ありがとうございます。今後共、ご意見がございましたら投稿をお願いいたします。
  1. 2013/05/08(水) 21:22:17 |
  2. URL |
  3. 飯野佳孝 #-
  4. [ 編集 ]

ご返答ありがとうございました。

部活の練習時に矢鱈と走らされた事によって、毎年校内で行われるスポーツテストの種目の一つであった1500メートル走のタイムが向上したという副次的効果がありましたが、バドミントン部に入ったのに走るのが少々速くなってもあまりうれしくはありませんでした。バドミントン部なのだからバドミントンが上手い選手になりたかった。いい友人達に出会えましたし、辞めずに最後まで続けられたので、後悔はまったくありませんが。

失礼します。
  1. 2013/05/16(木) 19:18:37 |
  2. URL |
  3. 幽寂閑雅 #-
  4. [ 編集 ]

どういう年齢、競技レベルでの話なのかという所まで言及いただければありがたいと思いました。
中学生の練習相手をしていますが、今時の子供は普段あまり活発に体を動かしておらず、基本的な運動能力を発揮させて(目覚めさせて?)いません。
まずは自分の運動能力を十分に発揮できるレベルくらいまでは長距離走もダッシュもフットワークも色々させることが有意義だなと実感します。
その上でバドミントンに特化したコート内スタミナを鍛えたいですね。
  1. 2013/05/18(土) 06:43:33 |
  2. URL |
  3. 一読者 #-
  4. [ 編集 ]

一読者殿、飯野です。初めまして!ご連絡ありがとうございます。ご意見の内容はよく理解いたしました。おそらく私のブログを読んでらっしゃる読者は小学生~社会人の選手及び指導者だと思います。そのなかで特定の選手及び指導者に対してこの選手はこうで、この選手はこうでと記載することは難しいのでご理解をお願いします。今回はトレーニングにおけるランニングの位置づけの話をしました。中学生でしたらダッシュやフットワーク(スピード&スタミナ)に縄跳び(二重跳び)&プライオメトリックトレーニング、アジリティトレーニング、筋持久力トレーニングも不可欠です。それらを練習計画の中で長期的な視点で組み入れることが重要です。
運動能力を目覚めさせるという観点からもいろいろなトレーニングは必要だと考えます。
詳しい内容はバドミントン教本基本編と応用編に記載していますので、ご一読頂ければ理解が深まると思います。
今後共よろしくお願いいたします。
  1. 2013/05/18(土) 08:19:32 |
  2. URL |
  3. 飯野佳孝 #-
  4. [ 編集 ]

ご返事ありがとうございます。
バドミントン教本両冊とも持っております!
でもまだまだ読みが足らなかったようですので、改めて勉強します。
飯野さんの解説・理論は私にとっては一番説得力を感じています。
最初に一番衝撃を受けたのが、バドミントンマガジン1998年6月号の特別企画記事「全日本ジュニア合宿レポート」でした。
私の学生時代はまだまだ伝統と根性論に基づいていた時代でしたので(それも大好きでしたが)、データと合理性に基づいた指摘はショックでした。
その割に勉強不足な質問をさせていただきすみません。本当によく知りたい思いと、少しでも子供たちに良いヒントを伝えたいので。
これからも解説・ご指導期待しております!
  1. 2013/05/19(日) 11:15:16 |
  2. URL |
  3. 一読者 #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

Author:飯野佳孝
●主な著書&DVD制作
バドミントン教本「基本編」
バドミントン教本「応用編」
バドミントン教本「Q&A」
DVD見てうまくなるバドミントン教本
目でみるバドミントンの技術とトレーニング
「ナイスショット勇羽」原作者 他
●NHKスポーツ教室 企画・解説・指導
2001年・'02年・'03年・'05年
・'06年・'07年・'09年・'10年
●コーチングセミナー専任講師
●全日本ジュニア研修合宿指導委員長
1992年~2007年
●選手としての主な成績
デンマークオープンダブルス優勝 1979年
全英選手権ダブルス3位 1979年
カナダオープンダブルス優勝 1977年
 ペアは全て土田証雄氏

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